配線長チューニング
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高速設計の配線に関する2つの重要な課題は、配線のインピーダンスをコントロールすることと、重要なネットの配線長を一致させることです。インピーダンスをコントロールする配線 により、出力ピンを離れる信号がターゲットの入力ピンで正しく受信できます。配線長を一致させることで、タイミングが重要な信号がターゲットピンへ同時に到達できます。配線長のチューニングや一致は、差動ペア配線の重要な要素でもあります。
Interactive Length Tuning や Interactive Differential Pair Length Tuning コマンド (Route メニューから実行) により、設計で利用できるスペース、ルール、障害に応じて可変振幅波形パターン (アコーディオン) を挿入できるようにして、ネット、または差動ペアの配線長を最適化、コントロールできます。
配線長チューニングのプロパティは、デザインルール、ネットのプロパティ、指定する値に基づきます。これらの波形パターン (アコーディオンとも呼ばれます) のコントロールは、Interactive Length Tuning モードの Properties パネルで行います (配線長チューニング中に TAB を押して、このモードのパネルを表示できます)。
ネットの配線長をチューニング
配線長チューニング機能は、洗練されたソフトウェア アルゴリズムと直観的なユーザ コントロールを組み合わせて簡潔になっています。配線長チューニング セグメントは、配線長チューニングのアルゴリズムによって自動で計算されたトラックやアークの寸法や位置を使用して、配線経路に沿ってカーソルを移動するだけで追加されます。キーボード ショートカットを使用すると、追加するチューニング セグメントの形状やプロパティをコントロールできます。
Route メニューから Interactive Length Tuning コマンドを実行すると、配線を選択するように促されます。ネット、または差動ペアをクリックした後、配線経路に沿ってカーソルを移動します。進路を離れても心配する必要はありません。カーソルをその進路に戻すとすぐに、アルゴリズムは、その箇所までチューニング セグメントを追加します。
チューニング形状とサイズのコントロール
配線長チューニング ツールを習得するには、2つの重要な要素があります: ショートカットを知っていて、ネット配線長ゲージの見方を知っていること。
配線長チューニング中に利用できるショートカットは、以下です:
ショートカット | 機能 |
---|---|
スペースバー | 3 つのチューニング形状を切り換えます |
, (コンマ) | Amplitude Increment で指定した量だけ振幅を減らします |
. (終止符) | Amplitude Increment で指定した量だけ振幅を増やします |
3 | Gap Increment で指定した量だけピッチを減らします |
4 | Gap Increment で指定した量だけピッチを増やします |
1 | コーナー miter を減らします |
2 | コーナー miter を増やします |
Y | 開始方向を切り換えます |
Tab | Interactive Length Tuning モードの Properties パネルを開きます |
Shift+G | 配線長チューニング ゲージのオン/オフを切り換えます |
目標配線長のコントロール
目標配線長を指定するには、3 つの方法があります:
- 手動で定義
- 既に配線されているネットに基づく
- デザインルールで定義
これらの方法のどれを使用するか選択するには、配線長チューニング中に Tab を押して、Interactive Length Tuning モードの Properties パネルを表示します。パネル下部の項目に、チューニング パターンの形状や範囲を定義するオプションがあります。上記のショートカットを使用して、インタラクティブにコントロールすることもできます。パネルの Target Length の項目には、3 つの目標配線長モードから選択するオプションがあります。
- Manual - Target Length 欄に配線長を入力します。再度、使用する場合に備えて、最近、使用した配線長は維持されます。
- From Net - デザイン内のネットからネットを選択します。このネットの配線長が目標になりますが、デザインルールで制限されている場合、それが優先されます - ルールを適用する方法は、以下で説明します。
- From Rules - 定義した Length、または Matched Length デザインルールから選択します。これらのルールの最も厳しい組み合わせに従います。パネルのリストにあるルールをダブルクリックして、その詳細を確認できます。
デザインルールの設定
配線長チューニング中に従う 2 つのデザインルールがあります。これらは、Matched Length ルールと Length ルールで、PCB Rules and Constraints Editor の High Speed カテゴリにあります。
これらのルールは、デザインで最も重要になる場合があります。これは、潜在的な問題がスキュー (異なる時間に到達する信号 - Matched Length ルールを考えます) 、または全体的な信号遅延 (Length ルールを考えます) に関するかどうかに依存します。
Matched Length デザインルール
Matched Length デザインルールは、目標のネットを、指定した許容範囲内で同じ配線長で配線するよう指定します。目標となるネットは、ルールスコープ、またはクエリで定義します。配線長チューニング機能は、目標のネットの最も長いネットを見つけて、MinLimit = LongestNet - Tolerance
から MaxLimit = LongestNet
までの有効な範囲となるよう動作します。
Length デザインルール
Length ルールは、Matched Length ルールを補完するもので、ネットの全体の配線長を指定します。目標のネットは、指定した 最小 から 最大 までの範囲内の配線長である必要があります。
ルールを適用する方法
適用できる Length ルールや Matched Length ルールがある場合、配線長チューニング機能は、これらの両方のルールを考慮して最も厳しい制約で働きます。そのため、Length ルールで指定した最大配線長が、Match Length ルールで目標にした最も長い配線長より短くなる場合、Length ルールが優先され、その長さがチューニング中に使用されます。
有効な範囲 と 目標配線長 は、以下のように決められます:
Matched Net Length MinLimit = LongestNet - RuleTolerance
Matched Net Length MaxLimit = LongestNet
ValidRange = Highest MinLimit to Lowest MaxLimit
(Length と Matched Length ルールの最も厳しい組み合わせ)
TargetLength =
Lowest MaxLimit
Length ルールで指定した最大配線長が、Matched Length ルールで識別された既存の最も長い配線長より短い場合、Length ルールが優先され、その短い配線長がチューニング中に使用されます。パネルには、各ルールの計算された Min Limit と Max Limit が表示されます。これらを使用して、目標配線長が期待通りであることを確認できます。
上図で、目標配線長はルールで定義されています。最も厳しい値が、Matched Net Length ルールから取得されていることに注意してください。Max Limit の値は、目標ネットの最も長い配線長が 53.479mm
であることを示します (これは、Length ルールで許可された最大配線長より短い)。この例では、配線長の最も厳しい許容差は、Matched Length ルールで定義した許容差です (1mm
)。そのため、これは、ValidRange
の計算に使用されます。目標配線長は、常に、より厳しい最大配線長となります。
ネット配線長ゲージの使用
Length ルールと/または Matched Length ルールを定義している場合、インタラクティブ配線中、または配線長チューニング中に配線長チューニングゲージを表示して配線長を監視できます。配線中、Shift+G のショートカットを使用してゲージのオン/オフを切り換えできます。
ゲージは、現在の Routed Length (配線済み配線長) を数字で示し、緑のスライダーは、Estimated Length (推定した配線長) を示します。ゲージを一見すると、Routed Length がルールの最小値に達していないことに混乱するかもしれませんが、緑のスライダーは、ルールの最小と最大の間のどこかにあります (下図のように)。それは、緑のスライダーが Estimated Length を示すためで、以下の通りです。
Estimated Length = Routed Length + distance to target
ゲージは、以下のように機能します:
- ゲージの外形を定義する長方形のボックス。
- 許可された最小、最大配線長を示す 2 つの黄色い縦のバー。最小と最大は、上記のようにデザインルールで定義した最も厳しい制約から決まります。
- 現在の routed length を示す色付きのスライダー。正確な配線長がゲージの上に文字で表示されます (例の画像では、53mm)。現在の配線長が範囲外から移動すると、スライダーは赤から緑へ変わり、最小と最大配線長の範囲内になります。
- ゲージの長方形は、可能な配線長の範囲を示します。上限と下限の意味は、選択した目標配線長モードに依存します。
- 適用できる Length ルールがあり、モードが Manual、または From Net の場合、スライダーボックスの下限はルールから取得され、上限はユーザが定義します。
- 適用できる Length ルールがあり、モードが From Rules の場合、スライダーボックスの上限と下限はルールから取得されます。
- target length モードが Manual、または From Net で、適用できる Length ルールが無い場合、スライダーボックスの下限は現在のネットの配線長になり、上限は指定した最大配線長になります。
配線長ゲージの例
- ゲージの最小 (ゲージの左端) は、50 (Length ルールの最小限度) です
- ゲージの最大 (ゲージの右端) は、60 (Length ルールの最大限度) です
- 左の黄色のバーは、52.071 (
Matched Net Lengthの最小限度
) です - 右の黄色のバーは、55.071 (
Matched Net Lengthの最大限度
) です - 目標配線長は、55.071 (セット内で最も長い配線長) です
PCB パネルの使用
PCB パネルで Nets モード に設定した時、配線済み信号の現在の配線長が表示されます。パネルのデフォルトモードでは、Name、Node Count、Routed length、Un-Routed (Manhattan) length が表示されます。列の項目を右クリックするとメニューが表示され、追加する列を選択したり、既存の列を非表示にできます。
Length デザインルールを設定している場合、ルールの対象となる各ネットの配線状態は色分けされ、route length < rule minimum
の場合、黄色で、ネットがルールに適合した
場合、透明で、route length > rule maximum
の場合、赤色でハイライト表示されます。
差動ペアの配線長チューニング
差動ペアの配線長は、Interactive Differential Pair Length Tuning コマンド (Route メニュー) を使用して、他の差動ペアの配線長に対して調整できます。差動ペア配線と同様に、このコマンドは、ペアの 2 つのネットで同時に動作します。
差動ペアの配線長を調整したい場合、matched length ルールを作成して、ペア間の配線長を一致させる要件を定義します (Group Matched Lengths オプションを有効にします)。2番目に、優先度が高い matched length ルールを作成して、ペア内の配線長を一致させる要件を定義します (Within Differential Pair Length オプションを有効にします)。
差動ペアの配線長を調整する適切な方法は、以下です:
- ペアを配線
- Interactive Differential Pair Length Tuning コマンドを使用して、ペア間の配線長を調整
- Interactive Length Tuning コマンドを使用して、各ペア内の短いネットの配線長を調整
既存のアコーディオン形状を変更
既存のアコーディオン部分を変更するには、以下の動画で示すように、クリックして選択し、編集ハンドルを表示します。端、または頂点をクリックしてドラッグし、アコーディオンの境界領域のサイズを変更できます — アコーディオン部分のサイズは、境界領域の形状に合わせて自動で変更されます。
アコーディオンをプリミティブへ変換
結合されている配線長チューニング アコーディオンは、プリミティブのトラックや/または、アークセグメントで構成されたグループ オブジェクトです。コンポーネント、座標、寸法線、ポリゴンのような他のグループ オブジェクトと同様に、配線長チューニング アコーディオン オブジェクトは、'分解' できます。言い換えると、フリープリミティブへ変換し、個別に変更できます。これを行うには、Explode Length Tuning コマンド (Tools » Convert サブメニュー、または右クリックし、Unions サブメニューから利用できます) を使用します。
関連情報
- The Routing
- Interactive Routing
- Differential Pair Routing
- Controlled Impedance Routing
- Modifying the Routing
- High Speed Design
- 配線長チューニング 機能に関するトレーニング センターの動画
- シグナルインテグリティの講師であり、業界の専門家である Eric Bogatin の Web サイト http://www.bethesignal.com/
- 高速設計の講師であり、業界の専門家である Howard Johnson 博士の Web サイト http://www.signalintegrity.com/
- 講師であり、高速 PCB 設計の専門家である Lee Ritchey の Web サイト http://www.speedingedge.com/