パッド/ビアテンプレートとライブラリ
トラック、パッド、ビアは、PCB レイアウトでカスタマイズして配置、設定する回路基板設計の重要な要素です。デザインの再利用の要件と、パッド/ビアプロパティの標準化は、各パッド/ビアを配置できるように、特定の目的のガイドラインや、適切なデザインルールで管理されています。
デザインの再利用や、PCB デザインでのパッド/ビアの管理機能を向上するために、Altium NEXUS では、自動化したパッド/ビアテンプレート、パッド/ビアテンプレート ライブラリ、パッド/ビア管理パネルを導入しました。
ライブラリに集約できるパッド/ビアテンプレートの概念は、PCB フットプリントライブラリと同様です。テンプレートは、プロパティを定義したプリミティブデザインの要素で構成されます。これらは、ライブラリに含めることができます。保存したライブラリは、事前に定義したパッド/ビアとして PCB デザイン(または、PCB ライブラリ)に配置できます。しかし、パッド/ビアテンプレートとライブラリや、それを管理する方法について、固有の点があることに注意してください。
Altium NEXUS のパッド/ビアテンプレート機能には、以下が含まれています:
- Pad and Via Templates – パッド/ビアの定義。
- PCB Pad Via Templates Panel – ローカルとライブラリベースのパッド/ビアテンプレートを管理するためのパネル。
- Pad Via Libraries –
*.PvLib
ファイルとして保存されたパッド/ビアテンプレート。 - Pad Via Library Panel – パッド/ビアテンプレート エディタに関するライブラリパネル。
- Pad/Via Template Editor – パッド/ビアテンプレートを作成、編集するために使用するエディタ。
- PCB Panel Pad & Via Template mode – 基板内のパッド/ビアや、それに関連するテンプレートを管理するための PCB パネルモード。
パッド/ビアテンプレート
パッド/ビアテンプレートには、パッド/ビアの基本構成(サイズ、形状、パッドスタック タイプ、ペースト/ソルダーマスク、穴情報等を含む)が保存されています。この構成は、IPC 基準(特に、IPC-7251/7351 パッドスタック命名規則)に従って自動で名称が決められます。そして、PCB ファイルに配置するパッド/ビアを定義するために使用されます。
既存の PCB ファイルにあるパッド/ビアタイプは、ファイルを開いた時、この方法で自動で名称が決められます(新しい機能を継承します)。この動作を確認するには、Properties ダイアログ(オブジェクトをダブルクリックします、またはオブジェクトを選択し、右クリックメニューから Properties を選択します)から既存のパッド、またはビアのプロパティを確認します。
ダイアログの Pad/Via Template の項目にある Template 名を確認してください。IPC ガイドラインに従って、その名称は、大きさ、形状、穴、ペースト/ソルダーマスクのようなパッド/ビアプロパティを元に作成されます。それらのプロパティを変更した場合、テンプレート名は、新しい構成に合わせて変更されます。
IPC の命名システムは、メートル系ベースで、その単位は、ミリの100分の1 (10-5 メートル, 10µm) です。そのため、例えば、円形パッドが 1.5mm で穴が 0.8mm のテンプレートは、c150h80
と言う名称になります。c
は、円(丸)、h
は、穴サイズのプリフィックスを示します。ペースト/ソルダーマスク プロパティを指定すると、文字/整数の組み合わせが追加されます。
ダイアログの Pad/Via Template の項目では、Library のリンク先が表示されることに注意してください。現在の PCB ファイルにあるパッド/ビアに関しては、<Local>
と表示されます(‘ローカル’ のテンプレート)。または、Pad Via Library (以下 をご覧ください) のテンプレートを使用している場合、ライブラリの参照先が表示されます。
PCB Pad Via Templates パネル
PCB Pad Via Templates パネルには、現在の PCB ドキュメントへ割り当てる(ローカル)パッド/ビアテンプレート、または現在のプロジェクト内に導入、含まれているパッド/ビアライブラリから利用できる (Available libraries) パッド/ビアテンプレートがリスト表示されます。
ワークスペースのステータスバー(エディタの右下)にある PCB » PCB Pad Via Templates を選択して、パネルを開きます。
パネルに表示される 2 つのライブラリの概念は、以下の通りです:
- Available Pad and Via Libraries – 読み込んだ、または導入したパッド/ビアライブラリ (ファイルベースのパッド/ビアテンプレート)。パネル上部には、選択したパッド/ビアライブラリに含まれているテンプレートがリスト表示されます。
- Local Pad/Via Library – 現在の PCB ファイルで使用されているパッド/ビアテンプレート(パッド/ビアライブラリから 追加した テンプレートを含む)。パネル下部には、現在の PCBファイルへ適用するテンプレートがリスト表示されます。
パネル下部の Local Pad & Via Library 欄のリストは、現在の PCB ファイルへ割り当てられているパッド/ビア設定(テンプレート)を表します。選択したテンプレートのプレビューは、その下に表示されます。
ここにリスト表示されたテンプレートは、PCB ファイルに保存されているパッドやビアを表し、個々に定義した 'ライブラリ' に含まれていません。選択したテンプレートは、ドラッグして、または右クリックメニューから Place を選択して、新しいパッド、またはビアとして現在の PCB ファイルで再利用できます。
ローカルライブラリにリスト表示されているテンプレート名は、現在の PCB ファイルのパッドやビアから反映されるため、特定のパッド/ビア設定を PCB ファイルから削除した場合、それに関するテンプレートは、ローカルリストから削除されます。
しかし、配置したパッド、またはビアが、パッド/ビアライブラリから利用している場合、PCB ファイルからパッド/ビアを削除しても、または別のテンプレートタイプへ変更しても、そのテンプレートは、ローカルリストで保持されます。必要無いパッド/ビアライブラリ テンプレートは、Remove Unused Pad/Via ボタンでローカルの 'データベース' レコードから削除できます。
パッド/ビアテンプレート ライブラリ
パネル上部にある Available Pad/Via template Libraries は、選択したパッド/ビアライブラリに含まれているテンプレートへ適用します。詳細については、以下 をご覧ください。上記の通り、選択したライブラリのテンプレートは、ドラッグして、または右クリックメニューから PCB へ適用できます。
パッド/ビアライブラリ テンプレートをローカルへ
パッド/ビアテンプレートのライブラリは、テンプレート名を右クリックし、メニューから Add to Internal Library を選択、またはパネルのパッド/ビアライブラリ欄からローカルライブラリ欄へテンプレートをドラッグして直接、ローカルライブラリリストへ追加できます。
これは、パッド/ビアライブラリ テンプレートのパッド/ビアを基板へ配置してから削除し、ローカルとして利用できるようにそのテンプレートを登録するのと同様です。ローカルリストへテンプレートを追加するのではなく、ローカルテンプレートを置き換えるには、Replace a Local Template をご覧ください。
ローカルドキュメントへ利用できるパッド/ビアライブラリ テンプレートは、現在のプロジェクトのルール、設定へ適用、デフォルトとして適用できます。例えば、ビアスティッチングを配置した時、配置したビアの特性は、Add Stitching to Net ダイアログ(Tools » Via Stitching/Shielding » Add Stitching to Net)で選択したテンプレートで定義されます。
ローカルテンプレートを置き換え
パッド/ビアテンプレートのライブラリは、ローカルテンプレートを置き換えできます(ローカルテンプレートを使用している基板上のパッド、またはビアを更新します)。
これを行うには、パネルのパッド/ビアライブラリ欄からローカルパッド/ビアライブラリ欄へテンプレートをドラッグしますが、この時に既存のローカルテンプレート名上でドロップします。テンプレートを使用するフリー、またはコンポーネントパッド/ビアは、新しいライブラリテンプレート形式へ更新されます。
以下の動画で、C4
と C5
のコンポーネントパッドは、'ドロップした' ライブラリテンプレートで定義されている形式に(ローカルライブラリリストで示されている通り、r32_36
から r30_50
へ)変わることに注意してください。
パッド/ビアライブラリから更新
PCB Pad Via Templates パネルのローカル欄にある Update ボタンで、現在のデザインのパッド、またはビアテンプレートをソースファイルから更新できます。
例えば、パッド/ビアライブラリ テンプレートから配置したパッドで、ソースライブラリ テンプレートを更新した場合、Update 機能により、テンプレートの変更が PCB へ反映されます(そのライブラリテンプレートを使用する全てのパッドを更新します)。
テンプレートの更新は、更新を開始した時に開く Update Pad or Via ダイアログで設定します。ここには、適用する変更の詳細がリスト表示されます。
ダイアログには、更新プロセスをコントロールするための以下の 3 つのオプションがあります:
- Update locked objects – これは、パッド/ビアオブジェクトがロックされている状態に関係無く、パッド/ビアオブジェクトのテンプレートを強制的に更新します。
- Update free objects – フリーパッドやビアへ適用するパッド/ビアテンプレートのみ更新します。
- Update component objects – コンポーネントに使用したパッドやビアへ適用するパッド/ビアテンプレートのみ更新します。
この同期は、Pad/Via プロパティ ダイアログにある、パッドやビアのライブラリリンク プロパティで構築されます。ローカルテンプレートとソーステンプレート間で相違がある場合、PCB パネルの Pad & Via Templates モードで Pads/Vias の項目のChanged 欄に表示されます(以下をご覧ください)。
既存のパッド/ビアライブラリは、プロジェクトへ追加できます。または、パネルのライブラリ名を選択するメニューの右にある ボタンをクリック(Available Libraries ダイアログを開く)して、導入できます。
全てのプロジェクトで利用できるように既存のライブラリ (*.PvLib
) を読み込むには、Installed タブオプションを使用します。既存のライブラリを現在のプロジェクトへ追加するには、Project タブを使用します。パッド/ビアライブラリの作成に関する詳細については、以下 をご覧ください。
パッド/ビアライブラリ
既存のパッド/ビアライブラリは、上述の通り、プロジェクトへ追加できます。または、メインメニューから File » New » Library » Pad Via Library を選択して、新しいライブラリを作成できます(または、現在のプロジェクトで右クリックして、メニューから Add New to Project » Pad Via Library を選択します)。
新しいパッド/ビアライブラリは、自動で現在のプロジェクトへ(Libraries – Pad Via Library Documents サブフォルダに)追加されます。新しいライブラリがアクティブになり、Pad Via Library Editor ウィンドウが、ワークスペース(最初はブランク)で開きます。そして、Pad Via Library パネルがアクティブになります。
Pad Via Library パネルには、現在のライブラリに含まれているパッド/ビアテンプレートがリスト表示されます。単位は、Display Units ドロップダウンメニューから選択します。
新しいパッド、またはビアテンプレートを作成するには、パネル内で右クリックし、メニューから Add Pad Template、または Add Via Template を選択します。ライブラリからテンプレートを削除するには、Delete を使用します。
Pad/Via Template Editor
Pad/Via Template Editor には、パッド、またはビアテンプレート(PCB、または PCB ライブラリドキュメントのパッド、またはビアへ適用できる)に関する基本の設定オプションがあります。これらには、パッド/ビア設定の主要な属性(パッド、またはビアをデザインドキュメントに配置する時、位置、方向、レイヤ等の特定の属性を定義する)が含まれています。
パッド/ビア設定オプションのほとんどは、標準の Altium NEXUS のパッド、ビア設定(サイズ、穴、マスク等)と同じです。そして、パッドスタック オプションは、一般的な用語で定義します(SMT (1 つの層)、またはスルーホール)。
エディタの下部では、現在のパッド、またはビア設定がグラフィカルに表示されます。ここでは、現在のパッド/ビアの形状やレイヤ属性のプレビューを確認できます。
現在のパッド/ビアテンプレート名は、自動生成の IPC バージョンからカスタム名に変更できることに注意してください(逆に言うと、名称は、 ボタンをクリックして、IPC compliant バージョンへリセットできます)。カスタム名のライブラリテンプレートを PCB ドキュメントに配置したパッド/ビアへ適用する時、その名称は、ライブラリリンクを意図的に解除するまで維持されます。
配置済みライブラリ テンプレートパッド/ビアの編集
パッド、またはビアをライブラリテンプレートから PCB に配置する時、通常、PCB Pad/Via Templates パネルを使用します。それには、編集できないパラメータが表示されます。これらは、テンプレートで定義するパラメータに相当し、パッド、またはビアで、ライブラリ テンプレートのリンクを解除するまで、読み取り専用として(下図に示す通り)ロックされます。
パッド/ビアは、Unlink コントロール(パッド/ビア名を編集したり、自動生成した IPC 基準フォーマットに戻すためにロックしたパラメータを解除します)をクリックして、ライブラリテンプレートのリンクを解除できます。
PCB パネルの Pad & Via Templates モード
現在の PCB ドキュメントで使用されているパッド/ビアテンプレートは、PCB パネル の Pad & Via Templates モードでコントロールできます。このモードは、PCB パネルの上部にあるモードのドロップダウンメニューから利用できます。
パネルのPad & Via Templates モードでは、アクティブな PCB ファイルのパッド/ビアテンプレート情報が階層で表示されます。3 つの欄に分割されています:
- Libraries
- Templates
- Pads/Vias
Libraries 欄
このリストでは、デザイン内のパッド/ビアテンプレートが表示されます。これらは、下の欄にテンプレートの詳細を表示するためのフィルタです。以下の項目でまとめられています:
- All – 全てのパッド/ビアテンプレートを表示します(パッド/ビアライブラリから使用したパッド/ビアテンプレートを含む)。
- Pads – 全てのパッドを表示します(ローカルとライブラリベース)。
- Vias – 全てのビアを表示します(ローカルとライブラリベース)。
- Local – 基板に適用した全てのパッド/ビアテンプレートを表示します(パッド/ビアライブラリから追加したパッド/ビアテンプレート以外)。
- Pad & Via Libraries – パッド/ビアライブラリから適用されているパッド/ビアテンプレートのみ表示します。
Templates 欄
このリストでは、現在のPCBデザインで使用されているパッド/ビアテンプレートが表示されます。ここには、テンプレート ソースライブラリ(ローカル、またはパッド/ビアライブラリ名)や、各テンプレートのパッド/ビア数 (Count) も表示されます。
Templates 欄では、Place ボタンを使用して、パッド/ビアライブラリ ベースのテンプレートを PCB デザインに配置できます。この機能を有効にするには、パネル上部にある Libraries 欄でパッド/ビアライブラリを選択します。
Pad/Via 欄
パッド/ビアリストでは、上部の Templates 欄で選択したテンプレートのパッド/ビアが表示されます。
各パッド/ビアを選択すると、オブジェクトは、ワークスペースでグラフィカルにハイライト表示されます(PCB パネルの上部にあるハイライト、ズーム、セレクトオプションで定義した通り)。
Pads/Via 欄でリスト表示されたものには、Changed ボックスが含まれます(リンクしたライブラリ ソーステンプレートが、ローカルのパッド、またはビアで使用したものと異なる時、チェックが入ります)。言い換えると、ソースパッド/ビアライブラリを更新した時。ローカルパッド/ビアのパッドスタックタイプを変更した場合(パッドを、ローカルにマルチレイヤからシングルレイヤへ変更することを言います)、Changed にチェックが入ります。
ローカルのパッド、またはビアは、上述 の通り、PCB Pad Via Templates パネルの Update ボタンを使用して、ソースパッド/ビアライブラリから更新できます。
Routing Vias ルール
新しい Template Preferred 制約オプション(Min/Max Preferred 制約へ切り換えできます)を、RoutingVias ルールへ追加しました。このオプションは、その名の通り、インタラクティブ配線中、ビアを配置するためにビアテンプレートを使用します。
このオプションを設定するには、Design » Rules を選択し、Design Rules – Routing – Routing Via Style を表示します。そして、PCB Rules and Constraints Editor ダイアログの制約オプションとして Template Preferred を選択します。モードのテンプレートオプションは、ローカルライブラリ(基板に配置した、または手動で ローカルライブラリへ追加した)にあるパッド/ビアライブラリ テンプレートで定義します。
テンプレートリスト内で、インタラクティブ配線中、利用したいテンプレートの Enable ボックスにチェックを入れます。それから、OK をクリックし、変更を適用してダイアログを閉じます。
インタラクティブ配線中、Min/Max Preferred ルール制約を使用している時と同じ方法で、配線ビアを配置中 (2 、または + キー) 、ビアオプションを切り換えできます (4 キー)。この場合、RoutingVias ルールのTemplate Preferred リストで有効にしたビアテンプレートを切り換えできます。
ビアタイプは、Interactive Routing for Net ダイアログ(ビア配置中、Tab を押す)の Template ドロップダウンリストからも選択できます。